この記事では、クリニックの動画広告で注意したい医療広告ガイドラインのポイントを、厚生労働省の一次情報をもとに整理します。先に結論をまとめると、次の3つが動画で特につまずきやすい論点です。
- 患者の体験談は、内容にかかわらず広告に使えない
- ビフォーアフターは、説明の付け方と媒体によって扱いが変わる
- 「No.1」「今だけ半額」「芸能人も通う」などの比較・費用強調・著名人の推薦は禁止または慎むべき表現
参照した一次情報はこちらです。
医療広告ガイドラインとは|動画広告も対象になりうる
医療広告ガイドライン(正式には「医療広告等ガイドライン」)は、医療法にもとづく広告規制の考え方を示した厚生労働省の指針です。
ガイドラインでは、次の2つを満たすものを医療広告として扱います。
- 誘引性:患者の受診を誘う意図がある
- 特定性:医療機関の名称などが特定できる
媒体の例には、放送・映写や、インターネット上の広告も含まれています。SNSの縦型動画広告も、クリニック名が分かり受診を促す内容なら対象になると考えて設計するのが基本です。
また、ガイドラインは、患者に広告と気付かれないように行う、いわゆるステルスマーケティングも、実質的に要件を満たせば広告として扱う場合があるとしています。広告表記の考え方は「UGC風広告とステマ規制の線引き」をご覧ください。
禁止されている広告の5類型
ガイドラインは、医療法と省令にもとづき、次の広告を禁止しています。
| 類型 | 内容 | 動画で起きやすい例 |
|---|---|---|
| 虚偽広告 | 事実と異なる内容 | 「絶対安全」「必ず成功」、加工した術前術後の写真 |
| 比較優良広告 | 他院より優れていると示す | 「地域No.1」「日本一」「最高の医療」 |
| 誇大広告 | 事実を不当に誇張する | 印象や期待感が実際と食い違う演出 |
| 体験談 | 患者の主観・伝聞による治療の感想 | 患者インタビュー、口コミ紹介 |
| 誤認させる術前術後写真 | 説明が不十分なビフォーアフター | 写真だけを並べた比較カット |
加えて、公序良俗に反する広告も禁止です。また、広告できる事項はそもそも法令で定められた範囲に限られている点も押さえておきましょう。
体験談|内容が問題なくても広告には使えない
ガイドラインは、患者自身の体験や家族からの伝聞にもとづく、治療の内容や効果に関する主観的な体験談を、医療機関への誘引を目的に紹介することを禁止しています。
ポイントは、体験談の中身が広告可能な範囲であっても認められないとされていることです。個々の患者によって感想は当然異なり、誤認を与えるおそれがあるためです。
動画でよくある次のような構成は、見直しが必要です。
- 患者役の演者が「ここで治療して人生が変わりました」と語る
- 実際の口コミ投稿を画面に並べて紹介する
- 「患者さんの声」としてインタビュー映像を流す
なお、Q&Aでは、個人のSNSや第三者の口コミサイトへの体験談の掲載は、医療機関が費用負担などで掲載を依頼しているといった誘引性が認められない場合は広告に当たらないとしています。逆にいえば、医療機関が依頼した投稿は対象になりえます。
ビフォーアフター|説明の付け方と媒体で扱いが変わる
ビフォーアフター(術前術後の写真等)について、ガイドラインの考え方は次のとおりです。
- 治療結果は患者によって異なるため、誤認させるおそれのある写真等は認められない
- 通常必要とされる治療内容・費用などの事項と、主なリスク・副作用などの詳細な説明を付した場合は、これに当たらない
- 説明は分かりやすい場所に置く。リンク先に回す、極端に小さい文字で載せる形式は採用してはならない
- 写真やイラストだけを示し、説明が不十分なものは禁止の例
さらに注意したいのが、治療効果は広告可能事項ではないという点です。ガイドラインは、限定解除の対象でない場合は術前術後の写真等は広告できないとしています。
限定解除とは
限定解除とは、一定の要件を満たした場合に、広告可能事項以外の内容も掲載できる仕組みです。要件は、患者が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト等であること、問い合わせ先の明示、自由診療の内容・費用、主なリスク・副作用の情報提供などです。
ガイドラインは、インターネット上のバナー広告や、費用を払って検索結果の上位に出すスポンサー表示などは、この「自ら求めて入手する情報」に当たらないとしています。SNSのフィードに流れる動画広告も、利用者が自ら求めた情報とは言いにくい形式です。動画広告でビフォーアフターを扱えるかは、媒体や遷移先も含めて慎重に確認する必要があります。
比較・費用の強調・著名人|動画で使いがちな表現
最上級・比較の表現
「日本一」「No.1」「最高」などの最上級表現は、客観的な事実であっても禁止とされています。「県内一の医師数」「日本有数の実績」も比較優良広告の例に挙がっています。
費用を強調する表現
ガイドラインは、「今なら○円でキャンペーン実施中」「期間限定で50%オフ」「治療し放題プラン」といった費用を強調した広告を、品位を損ねるものとして慎むべき例に挙げています。動画の冒頭フックで価格を大きく打ち出す構成は、医療機関の場合は避けるのが基本です。
著名人・インフルエンサーの起用
「著名人も○○医師を推薦しています」「著名人も当院で治療を受けています」は、比較優良広告の例です。一方で、芸能人や著名人が医療機関の名称など広告可能な事項を説明すること自体は差し支えないとされています。
演者を起用する場合は、「推薦」「通っている」「効果があった」と言わせず、広告可能な事項の説明役にとどめる設計が必要です。演者選びの考え方は「演者の選び方」でも解説しています。
インフルエンサーの紹介投稿とステマ
クリニックがインフルエンサーに施術を提供し、SNSで紹介してもらう手法もあります。この場合、ガイドラインの考え方では、医療機関が費用負担などをして掲載を依頼していれば、医療広告として扱われる可能性があります。あわせて景品表示法のステマ規制の観点から、広告であることの表記も必要です。
「個人の投稿だから大丈夫」と考えず、依頼した投稿は広告と同じ基準で内容を確認しましょう。
動画広告を作るときの進め方
医療機関の動画広告は、表現を後から直すと構成ごと崩れがちです。企画の段階で次の順に確認すると手戻りが減ります。
- 何を訴求するかを、広告可能事項の範囲で決める(診療科名、診療内容、設備、医師の経歴など)
- 体験談・ビフォーアフター・比較・費用強調を使わない構成を先に組む
- 冒頭フックは「悩みの提示」「よくある疑問」など、効果を約束しない切り口にする
- 遷移先のLP・サイトで、自由診療の内容・費用・リスクを分かりやすく示す
- 出稿前に、事例解説書(第6版・PDF)や媒体の審査基準と照らし合わせる
BUZZ MEETでは、美容クリニックの案件で、案件ごとに使えない表現を洗い出してから台本を作っています。美容クリニック向けの動画広告もあわせてご覧ください。
まとめ
- 動画広告も、誘引性と特定性があれば医療広告として扱われうる。体験談は内容にかかわらず使えない
- ビフォーアフターは説明の付け方・掲載場所・媒体で扱いが変わる。フィード型の動画広告では特に慎重に
- 最上級表現・費用の強調・著名人の推薦は避け、効果を約束しない切り口で冒頭を設計する
表現ルールを踏まえたクリニック向け動画の企画から制作・運用までご相談いただけます。お問い合わせ
個別の表現の可否は、専門家や媒体の審査基準もあわせてご確認ください。
よくある質問
動画広告も医療広告ガイドラインの対象ですか?
対象になりえます。ガイドラインは、誘引性と特定性を備えた情報を医療広告としており、媒体の例として放送・映写やインターネット上の広告も挙げています。SNSの動画広告も、クリニック名が分かり受診を促すものであれば対象として考えるのが基本です。
ビフォーアフター写真は一切使えないのですか?
ガイドラインは、治療内容・費用などの事項と、主なリスク・副作用などの詳細な説明を付した場合は禁止に当たらないとしています。一方で、治療効果は広告可能事項ではないため、限定解除の要件を満たさない広告では掲載できないともしています。媒体と形式によって扱いが変わるため、個別の確認が必要です。
患者さんの口コミを動画で紹介してもよいですか?
ガイドラインは、患者の主観や伝聞にもとづく、治療等の内容や効果に関する体験談の広告を禁止しています。内容が広告可能な範囲であっても認められないとされているため、治療の感想を語ってもらう形の動画は避けるのが安全です。
あわせて読みたい
