この記事では、化粧品・健康食品の動画広告で、薬機法上リスクになりやすい表現を6つの類型に整理し、言い換えの考え方を紹介します。先に要点をまとめると、次のとおりです。
- 化粧品は認められた効能の範囲、健康食品は医薬品的な効能効果をうたわないことが出発点
- 「治る」「必ず」「副作用なし」「No.1」などの保証・最大級の表現はNGになりやすい
- 動画ではビフォーアフター、体験談、浸透アニメーションが論点になりやすい
参照した一次情報はこちらです。
- 医薬品等の広告規制について(厚生労働省)
- 医薬品等適正広告基準(PDF)/同 解説及び留意事項等(PDF)
- 無承認無許可医薬品の指導取締りについて(PDF)
- 健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について(消費者庁・PDF)
薬機法の広告規制とは|動画広告も対象
薬機法(医薬品医療機器等法)は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器などの品質や安全性を確保するための法律です。広告については、第66条で虚偽・誇大な広告を、第68条で承認前の医薬品等の広告を禁じています。
その運用の目安として厚生労働省が示しているのが「医薬品等適正広告基準」です。この基準は、新聞・雑誌・テレビ・ラジオに加え、ウェブサイトやSNSを含むすべての媒体の広告を対象としています。
また、薬機法には、虚偽・誇大広告(第66条第1項違反)に対する課徴金制度もあります。厚生労働省のページに掲載された条文では、対象期間の売上(対価合計額)の4.5%に相当する額とされています。
化粧品と健康食品で「出発点」が違う
化粧品
化粧品がうたえる効能は、厚生労働省の通知で56項目に定められています。「肌を整える」「肌にうるおいを与える」「皮膚の乾燥を防ぐ」「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」などです。この範囲を超える表現は、明示・暗示を問わず避ける必要があります。
一方で、「小じわを目立たなく見せる」のようなメーキャップ効果や、「爽快にする」といった使用感は、事実であれば表現できるとされています。
健康食品
健康食品は食品なので、そもそも効能効果をうたえる前提がありません。厚生労働省の通知では、次のような表現があると医薬品的な効能効果を標ぼうしているとみなされるとしています。
- 病気の治療・予防:「糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に」「便秘がなおる」など
- 身体機能の増強:「疲労回復」「体力増強」「老化防止」「新陳代謝を盛んにする」など
ただし、栄養補給や健康維持に関する表現はこの限りでないとされています。また、トクホや機能性表示食品などは、それぞれの制度で認められた範囲の表示になります。
NGになりやすい表現6類型と言い換えの考え方
以下は、一次情報で示されている考え方をもとにした一般的な整理です。言い換え例も、そのまま使えることを保証するものではありません。
| 類型 | NGになりやすい例 | 言い換えの方向性 |
|---|---|---|
| ① 治療・予防 | 「ニキビが治る」「シミが消える」 | 化粧品の効能範囲へ:「肌を清浄にする」「日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ」 |
| ② 効能範囲の逸脱 | 「肌が若返る」「たるみが上がる」 | 認められた効能・使用感へ:「肌にはりを与える」「使うたびにしっとり」 |
| ③ 効果の保証 | 「必ず変わる」「全員が実感」 | 保証をやめ、使い方や使用感の描写へ |
| ④ 安全性の保証 | 「副作用なし」「天然成分だから安心」 | 安全を約束する表現は使わず、成分の事実を正確に |
| ⑤ 最大級の表現 | 「最高の効き目」「世界一」「売上No.1」 | 最上級をやめ、具体的な特長の説明へ |
| ⑥ 即効性・持続性 | 「すぐ効く」「1回で激変」「効果が3日続く」 | 時間の約束をやめ、使うシーンの描写へ |
③④ 保証の表現
適正広告基準は、効能効果や安全性が確実であると保証するような表現を禁じています。解説では「根治」「全快する」「副作用の心配はない」などが例に挙がり、明示・暗示を問わず認められないとしています。「天然成分を使用しているので副作用がない」という表現も、認めない趣旨の例として示されています。
⑤ 最大級の表現
「最高のききめ」「世界一を誇る」「売上No.1」などは認められない例です(「売上No.1」は、化粧品や一部の医薬部外品には注記で除外があります)。とはいえ、根拠のない「No.1」は景品表示法の問題にもなるため、使わない前提で考えるのが安全です。
健康食品で気をつけたい言い回し
- 「飲むだけで痩せる」→ 消費者庁の留意事項は、摂取するだけで運動や食事制限なしに短期間で著しく痩せるかのような表示を、虚偽誇大表示等に当たるおそれがある例に挙げています
- 「免疫力アップ」「疲れが取れる」→ 身体機能の増強として医薬品的な効能効果とみなされうるため、栄養補給・食生活のサポートの範囲で表現を考えます
動画ならではの注意点
テキスト広告と違い、動画では映像・演出そのものが効能を語ってしまうことがあります。
ビフォーアフター
解説では、使用前・使用後にかかわらず、承認等の範囲を超える効能を想起させる図面・写真や、効果が出るまでの時間・持続時間を保証するものは認められないとしています。肌の変化を並べる演出は、効能範囲の内側に収まっているかを確認します。
体験談
解説では、愛用者の感謝の言葉や「私も使っています」といった使用経験・体験談的な広告は、一部の例外を除き行ってはならないとしています。例外は、化粧品などで使用感を説明する場合や、タレントが単に製品の説明をする場合です。UGC風の「使ってみた」動画では、効能ではなく使用感を語る構成が基本になります。
健康食品については、消費者庁の留意事項が、「個人の感想です」などの表示をしても虚偽誇大表示等かどうかの判断には影響しないとしています。また、依頼した体験談を一般の利用者の声のように見せることも問題となる例です。表記の考え方は「UGC風広告とステマ規制の線引き」をご覧ください。
浸透・作用のアニメーション
成分が肌に浸透する、炎症が消えるといった模式図やアニメーションも、効能や安全性の保証的な表現にならないよう注意するよう示されています。作用の仕組みを単に説明するアニメーションであっても、同じ注意が必要とされています。
医師・専門家の起用
適正広告基準は、医薬関係者や美容師などが推せん・公認しているなどの広告を禁じています。白衣の演者が「皮膚科医もすすめる」と語る構成は避けましょう。
企画段階で表現を固める進め方
表現のチェックを編集後に行うと、構成ごと作り直しになることがあります。おすすめの順番は次のとおりです。
- 商材の区分(化粧品/医薬部外品/健康食品など)と、うたえる範囲を確認する
- 案件ごとにNG表現リストを作り、台本の段階で当てはめる
- 冒頭フックは効能ではなく、悩みの共感や使うシーンで作る
- テロップ・ナレーション・映像演出の3つすべてをチェックする
冒頭の作り方は「冒頭2秒フック6選」、化粧品・健康食品の制作の考え方はD2C・EC向けのページでも紹介しています。
まとめ
- 化粧品は56項目の効能範囲、健康食品は医薬品的な効能効果をうたわないことが出発点
- 治療・保証・最大級・即効性の表現は、使用感や使うシーンの描写に置き換えて考える
- 動画ではビフォーアフター・体験談・アニメーションも表現の一部としてチェックする
案件ごとのNG表現の洗い出しから、台本・撮影・編集まで一貫してご相談いただけます。お問い合わせ
個別の表現の可否は、専門家や媒体の審査基準もあわせてご確認ください。
よくある質問
薬機法の広告規制は、SNSの動画広告にも適用されますか?
医薬品等適正広告基準は、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・ウェブサイト・SNSなど、すべての媒体の広告を対象とすると定めています。縦型の動画広告も例外ではありません。
健康食品は医薬品ではないので、薬機法は関係ないのでは?
食品でも、病気の治療・予防や、身体機能の増強を目的とするような効能効果をうたうと、医薬品とみなされる場合があります。厚生労働省の通知では、承認を受けていない医薬品の広告として問題になりうる例が示されています。景品表示法や健康増進法の規制もあわせてかかります。
「個人の感想です」と入れれば体験談を使えますか?
消費者庁の留意事項では、「個人の感想です」「効果を保証するものではありません」などの表示をしても、虚偽誇大表示等に当たるかどうかの判断に影響しないとしています。表示内容全体で判断されるため、注記だけで解決するものではありません。
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